⚫︎登壇質問:
地球環境とエネルギー問題は密接な関係にあります。
人間の経済活動により刻一刻と悪化する地球環境を改善、または再生させていくには、再生可能エネルギーのさらなる普及が必要となるのではないでしょうか。
再生可能エネルギーの1つである太陽光発電は、原発や火力発電のように巨大な施設を作る必要がなく、最小単位で言えば、パネル1枚あれば一般庶民でも電気を作り出すことが出来る、身近な発電方法であり、個人または地域でエネルギーをつくることで災害時においては、停電による負担を軽減、又はなくしていくことも可能となります。
匝瑳市は脱炭素先行地域に選定され、これから市内での再生可能エネルギーの普及が進んでいくところだと認識しています。エネルギーの地産地消率が上がっていけば、大手電力会社やひいては中東などのエネルギー大国への依存度を下げることに繋がり、さらにはエネルギー消費によって外へ出ていったお金が地域でまわるようになります。
エネルギーと経済が地域でめぐる、「めぐりのまち匝瑳」になっていくことを期待しています。
他方、とても身近で可能性を秘めている太陽光発電ゆえに急速に普及、拡大したことで、規制や法整備が追いついておらず、全国では良くない事例を聞くこともあります。
その1つが、山を切り開いた大規模なメガソーラーの建設です。
環境負荷低減のためであるはずの太陽光発電が、森を切り開き、山を削り、環境破壊をしている、ということで各地で問題になっています。
匝瑳市には深い山がなく、厳しい残土条例もあって、大規模開発の事業者はなかなか参入して来ないかもしれません。
ですが、私の住む吉田地区で、事業面積30000㎡、そのうちパネル用地13000㎡の山を切り拓く事業計画をしている事業者がいます。
市外の事業者です。
匝瑳市の残土条例によって、事業を進めるのは難しいかもしれません。
ですが、もし仮に事業が進めば、例え匝瑳市の脱炭素先行地域の進める事業と関係なくても、事情を知らない市民やそれを目にした人からは「これが匝瑳のゼロカーボンか、これが脱炭素先行地域か」と悪いイメージ、足枷になりかねません。
残土条例があるから事業は進められない、大丈夫、という結果論ではなく、山を切り開く太陽光パネル設置事業を規制する条例が必要であると私は考えます。
条例は匝瑳市の意志を示すものでもあります。
なんでもかんでも推進するのではなく、規制するところは規制する、山を切り拓くような太陽光発電事業は認めない!
そういう強い意志を示してこそ、脱炭素先行地域と言えるのではないでしょうか?
再生可能エネルギー、太陽光発電を推進する脱炭素先行地域の匝瑳だからこそ、規制する条例も必要です。
見解を伺います。
⚫︎回答
市長:太陽光発電のネガティブな側面についてのお尋ねでございますが、議員ご指摘のとおり、一部の太陽光発電設備は、その設置方法により、土砂流出や景観への影響等の問題を生じさせており、地域によってはこれらを規制するための条例を制定する地方公共団体も存在しています。
山地を切り開くなどして太陽光発電設備を導入する場合、多くが土地の埋立を伴う工事が行われることとなりますが、議員ご認識のとおり「匝瑳市土地の埋立て等及び土砂等の規制に関する条例」により、土地の埋立て等を行う事業主等は、土地の埋立て等に使用された土砂等が崩落しないように必要な措置を講じなければならないことが規定されており、災害を引き起こす太陽光発電の開発を防止することができます。
また、「千葉県林地開発行為等の適正化に関する条例」においても災害の防止、環境の保全の担保等が森林開発を行う際の基準となっており、環境を著しく破壊する太陽光発電は規制されることとなります。
現在、本市独自の太陽光発電設置の規制に関する条例やガイドライン等はございませんが、設置される場所に応じて、対象となる法令に基づく許可や届出が必要となることを事業者に対して説明を行っているところでございます。
また、本市においては、ソーラーシェアリングの取組を軸とした脱炭素先行地域の取組を進めているところでございますが、地域農業との親和性、地域への裨益を最重要視した方法であり、昨今国でも盛んに叫ばれております地域共生型再生可能エネルギーの導入を先進的に行ってまいります。
今後につきましては、既に条例やガイドライン等を定めております先行自治体の規制内容や状況等を参考に、規制の必要性も含めまして、調査研究を行うとともに、乱開発ではない、匝瑳市ならではの地域共生型再生可能エネルギーの取組を発信してまいります。
【再質問】
1、市長のお考えとしては、広範囲にわたって山を切り開く、森を切り開くような太陽光発電事業について、反対でしょうか?それともある程度はまぁ良しとするのか?どういうお考えでしょうか?
【回答】
広範囲にわたってということで山や森を切り開いてということでありますけれども、そのような事業者は、当然でございますが地域におけるまずその合意形成というんですか、そういったところが不十分なまま着手するようなものや、しっかりとした安全が確保されない、また自然環境や生活環境への適正な配慮が不足している、そのような再生可能エネルギー事業というのは展開されるべきではないというふうに考えております。
そのような中で、市といたしましても、地域における、先ほども申し上げましたやはり合意形成が図られ、環境に適正に配慮した、地域に貢献する、そのような地域共生型の再生可能エネルギーの導入ということを推進してまいりたいと考えております。
2、私としては、匝瑳市の意思をぜひ条例という形で示してほしいと思いますので、よろしくお願いします。
そして、環境エネルギー政策研究所のISEPさんが全国の規制条例を種類別にまとめてくれています。例えば抑制区域、禁止区域を設けるとか面積要件とか、そのISEPさん、非常に詳しい専門知識に長けた方が匝瑳みらいに関わってくれていますので、ぜひ御意見、御助言をいただいて間違いのないような形に、匝瑳市で悪い事例を起こさないように進めていってほしいと願いますが、課長、改めて御答弁いただけますでしょうか。
【回答】
悪い事例を生み出さないようにとの御指摘でございますが、市長答弁にもございましたが、先行自治体の規制内容や状況等を参考にいたしまして、規制の必要性も含めて調査・研究を行ってまいりたいと考えております。
3、
太陽光パネルのネガティブな側面の一つに、使えなくなったらごみの山になるんじゃないかというものがありますが、この問題はどうなんでしょうか、認識を伺います。
【回答】
太陽光パネルの廃棄問題についてのお尋ねでございますけれども、匝瑳市が現在進めております脱炭素先行地域の事業におきましては、太陽光発電設備は全て本市も出資する匝瑳みらい株式会社が所有する形となっております。
また、この計画の段階から将来想定される廃棄を見越し、廃棄・撤去費用について積立てを行いまして、しっかりと管理を行う仕組みを構築することとしているところでございます。
政府では、再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会等において、再エネ発電設備の廃棄・リサイクルにおける事業段階ごとの課題や廃棄・リサイクルに関する仕組みの基本的方向性に関する議論が進められている等動きが活発化しているため、本市でもこの動きに引き続き注視してまいりたいと考えております。
→現在は積極的にリユースも進んでいるかと思います。
そして、2022年7月に廃棄・撤去する費用を積み立てることが義務化されました。さらに、リサイクルを義務化する動きも国のほうであるようですので、より適正な運用がなされていくことを期待しているところではありますが、リサイクル技術そのものに関しても、今は太陽光パネルのリサイクル業者が出てきてリサイクルができるようになっています。
太陽光パネルの構造は、実はとてもシンプルでリサイクルしやすいそうなんですね。1枚の太陽光パネルの大体97%を再資源化できる技術が確立されていると言われています。フレームはアルミなので、むしろ売ればお金になります。表面はガラスですが、今はホットナイフ分離法という300度の加熱したナイフでガラスを割ることなく発電する部分とを分離することができるようになっています。
さらに、リサイクルというと回収した資源を別のものを作るときの材料にするということになるんですが、最近では岡山の企業が回収したパネルの材料で再びパネルを作るリボーンパネルというものを作ることに成功しまして、現在実証実験を経て事業化に向けて動いているという情報もあります。適正な廃棄・リサイクルに向けて今各方面でいろいろと動いてきていますので、私としても注目しているところであります。
4、太陽光パネルには有害物質が含まれているんじゃないかという情報もありますが、どうなんでしょうか。
【回答】
太陽光パネルに含まれる有害物質についてのお尋ねでございますが、パネルには4物質、鉛、カドミウム、ヒ素、セレンの含有が想定されます。環境エネルギー政策研究所の情報によりますと、実際に導入されている太陽光パネルの約95%以上を占めるシリコン系の太陽光パネルは、鉛を使用している場合があるものの、保護ガラスやバックシートが破損したとしても有害物質が直ちに環境に流出する可能性は非常に小さいこととされております。
また、これらの物質につきましては、国の太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドラインにおきまして、令和6年4月からは排出事業者等が適正処理のために必要な情報を処理業者に提供できるよう、発電事業者が新規に再生可能エネルギー特別措置法における認定申請を行う場合には、4物質の含有情報等の登録がある太陽光パネルのみの使用を求める措置を開始する等の対策が進んでおります。本市としても、こうした動きを注視してまいりたいと考えております。
→今の主流はほとんどがシリコンパネルですね。そのシリコンパネルとは別のタイプ、化合物タイプと呼ばれるパネルにカドミウム、ヒ素、セレンがそれぞれ含まれていると。化合物タイプのパネルは全体シェアのほんの一部です。シリコンパネルのシェアがどんどん増えてきて、私の調べでは2022年の時点で全体の98%以上になっています。残りの2%のうちの一部が化合物パネルということで、今は本当に少なくなっております。
そして一方、シリコンパネルには、ハンダづけで、少量ではありますが鉛が使われているので適切に処理しなければいけないわけですが、御答弁いただいたように、よっぽどバキバキに破損しなければ環境中に出ることはなかなかありません。これはほかの鉛が使われている家電製品も同じだと思われます。そして、2010年以降は鉛フリーですとか鉛の含有率が低いパネルが増えてきていますので、より安心のパネルの普及に期待しております。
5、少し大きな問題になりますが、ウイグルでの人権問題に絡んでいるんじゃないかと言われていますが、認識はされていますでしょうか。
【回答】
太陽光パネル製造に関する人権問題についてのお尋ねでございますが、議員御指摘の記事が昨今多数出てきていることは認識しております。本件につきましては、今後も国際情勢を注視してまいりたいと考えております。
→世界には様々な人権問題起こっておりまして、私も心を痛めている一人であります。
この件について調査してみたんですが、現在主流のシリコンパネルには単結晶パネルと多結晶を意味するポリシリコンパネルがあります。単結晶と多結晶でちょっと紛らわしいので、今日は多結晶パネルを英語のポリシリコンと言わせていただきます。
世界に出回っているポリシリコンの半分くらいがウイグルに工場があったりして、人権問題が関わっているのではないかと言われています。ポリシリコンパネルは単結晶パネルを作る際の端材でできるため、安価に製造ができるそうなんです。そのため以前は大きなシェアを占めていたんですが、やはり発電効率においては単結晶パネルのほうが優れていまして、2019年以降は単結晶パネルのシェアがどんどん伸びてきました。
国立研究開発法人、NEDOによると、2022年には単結晶パネルのシェアは太陽光パネル全体の95%、ポリシリコンは3%を下回っています。ウイグルに関わるのはポリシリコンの半分程度なので3%の半分、全体のシェアの1.5%ということになります。もちろん少ないから気にする必要はない、問題ないということではなく、人権問題は社会全体でなくしていかなければいけないと思うところではありますが、例えばアメリカでは2022年にウイグルに工場を持つ5社のパネルの輸入を禁止しましたので、日本もそれを追随することを私としては願っております。
大きな問題ではありますが、そういった人権問題が存在しているんだという認識ですね、全く知らなかったではなく、そういう認識を持って進めていってほしいと思いますが、市長、御答弁いただけますでしょうか。
【回答】
やはり人権問題というのは大きな問題であり、私の考えとしてもSDGsというような観点からもそういうようなことはやはり重要でありまして、今後の国際情勢を本当に注視しながら、また実際に事業を進めてもらいます匝瑳みらいともそのようなことはしっかりと認識を共有しながら事業を進めてまいりたいというふうに考えております。
→ネガティブな部分をクリアしてこそ推進ができると思います。
かつては日本のメーカーも太陽光発電開発に力を入れてきましたが、国としては化石燃料、原発に力を入れ、太陽光パネルの開発は中国にシェアを持っていかれたという話も聞きました。エネルギー問題を語る際にCO2ばかりに焦点が当てられがちですが、化石燃料は大気汚染ですとか水質汚染につながります。原発は100キロワットの電気をつくるために200キロワットの電気を無駄にしていると言われており、そして「70トンの水を1秒で7度上げる」という、その莫大なエネルギーで温められた温排水が周辺の海の生態系を壊しているという報告もあります。最終処分場の問題、地震大国の不安もあります。
そして、発電方法に限らず、遠い場所で大きなエネルギーをつくって遠くに運ぶ、それによって生まれる送電ロスは日本全体で原発数基分と言われております。太陽光発電も決して完璧なエネルギーではありませんが、これまでのエネルギーより環境負荷が少なく、適正に使えば可能性はまだまだあると思うんですね。
例えば農家の安定収入のために開発されたソーラーシェアリング、あるいはこれから出てくる薄い膜状の「ペロブスカイト太陽電池」、これらは日本人の方が開発しました。そして、このペロブスカイトの原料はヨウ素、ヨウ素の世界シェアは日本が第2位、千葉県は一大生産地です。このペロブスカイトに力を入れている日本の大手企業が、匝瑳市の企業と今コラボして実証実験もしております。とても可能性を秘めていると私は感じております。
そんな、国産原料でどこにでも取り付けられるペロブスカイトの期待、これまでの一極集中型のエネルギーシステムから地方分散へのシフト、そして海外からのエネルギー依存状態からの脱却、様々な視点から匝瑳市の脱炭素先行地域の動向に期待しております。