農水省が発表する令和4年度の日本の自給率はカロリーベースで38%。その自給率の低さが問題視されています。品目別で見ると、
日本食に欠かせない味噌や醤油、豆腐などの原料となる大豆が、わずか6%、
パン、麺、そしてこれも醤油の原料になりますが、小麦が15%。
他にも油脂類14%、砂糖類34%が際立って低くなっています。
さらに、肉類は全体で53%であるものの、家畜のエサとなる飼料を考慮すると、わずか8%となるそうです。
その一方で、高い自給率なのは、
米99%、野菜79%なのですが、安心はできません。
これから離農者が相次ぐことによる農家の減少、
そして、リン、カリウム、尿素など化学肥料の多くを輸入に依存していること。
さらに、タネに関して言えば、日本には種苗メーカーがあるものの、その採種地は海外であることが多く、野菜の種の自給率は10%以下だと言われています。
日本の食、農業は、海外に大きく依存しており、海外情勢の影響により、簡単に揺らいでしまいます。
今後、海外情勢の変化やさまざまな理由により、物流が途絶えたり、資源を保有している国の輸出規制などがあれば
日本から食料がなくなる、あるいは、食料が作れなくなる、という危うさを持っています。
何人もの専門家が指摘しているところでありますが、中でも元農水省の官僚で、東京大学大学院農学生命科学研究科の鈴木宣弘教授が「世界で最初に飢えるのは日本」と警鐘を鳴らしています。
この問題はとても大きく、本来、国が対策をしていかなければいけないことであり、
地方自治体で出来ることは、とても限られています。
ですが、食料がなくなる、というまさかの事態が起きないように、改めて問題意識を共有し、海外への依存度を下げていく取り組み、自立した農業の確立へ向けて、小さくても自分たちに出来ることをやっていくべきだと考えます。
大きな方向転換は難しくとも、将来、実を結ぶような未来へのタネまきを今、始めるべきではないでしょうか?
見解を伺います。
【回答】
気候変動や世界情勢の不安定化、人口増加に伴う食料需要の拡大等により、世界的に食料や生産資材等の流通が滞る状況が見受けられている。
今国会における農林水産大臣の所信表明では、「農業政策の最も重要な使命は、国民に食料を安定的に供給すること」、さらに「国民の大切な食を守るためには、将来にわたり持続可能で強固な食料供給基盤を構築することが急務」との発言がされたところである。
市としても、農林水産物をはじめとする食料や化学肥料、畜産配合飼料等の原材料や生産資材等の多くを輸入に依存している状況は、我が国の重要な課題であり、食料自給率の向上や持続可能な農業の確立が肝要であると認識している。
引き続き「地産地消・食の安全と自給率向上都市宣言」の理念に基づく地元産品への理解と利用の促進を図り、地産地消を通じた地域の食料自給率向上に繋げることで、広い意味での食料安全保障の強化に貢献できるよう取り組んでいく。
また、本市における海外からの輸入依存度を下げる取り組みとしては、耕畜連携による国産飼料の生産・利用拡大を目的とした飼料用作物の生産利用に対する支援や、水産資源の増殖を目的とした稚魚等の種苗放流事業への支援等に取り組んでいるところである。こうした取り組みにより、食料自給率の向上や輸入依存度の低減に繋げていきたいと考えている。
【再質問】
自給率が低く、海外依存度が高いと、外交上、立場が弱くなったり、本当に食料の確保が危うくなった時には、食の安全性については二の次になってしまいます。
つまり、今は危険だから禁止しているものでさえ、食べられなくなるよりはマシだと、OKになってしまう危険性も孕んでいます。
地域の在来品種を守り繋いでいくローカルフード法を制定しようという動きが見られたり、今治市では、地域の食と農を守っていく条例が出来たりもしています。
1、海外への依存度を下げる取り組みとして、現在かなり輸入依存度が高い化学肥料の使用を低減する農業を構築することにより、循環型農業、持続可能な農業を推進することに繋がると思いますが?
答:化学肥料の使用低減に向けた取り組みとしては、県が定める化学肥料の使用等の基準に基づき栽培管理を行うことで、取得できる「ちばエコ農産物」認証制度の活用や、家畜の排せつ物を原料とした堆肥を活用し優良な土づくりや化学肥料の低減を図る、耕畜連携を推進している。
これら、持続可能で環境にやさしい農業の取組みを推進し、化学肥料の使用低減に向けた取り組みを、進めていきたいと考えている。
2、先日、私は有機の里と言われる大分県臼杵市に視察に行ってきました。
人口は匝瑳市とほぼ同じ。農業、漁業、それから醤油や味噌の醸造業が盛んな地域で、匝瑳市と似ているところがあります。
臼杵市の取り組みを紹介します。
臼杵市には、自然環境‥、特に「水」を大事にしようという意識が根付いています。
2010年に有機農業推進室を設置し、市独自の認証制度「ほんまもん農産物」というものを作りました。有機JASと同じ水準の認証です。
認証をとる費用は、個人ではなく、市が負担することで、ハードルを下げました。
すると、「ほんまもん農産物」認証の取得件数が、2011年で10戸だったのが、10年で54戸まで増えたそうです。
それから、「健康な野菜をつくるには、健康な土づくりから」ということで行政で、土づくりセンターを作りました。草木類8割、豚糞2割の完全堆肥です。
それを「うすき夢堆肥」という名前で格安で市民に売っています。
土づくりセンター単独で見ると、かなり赤字なんですが、それまで草木類を燃やすのにかかっていた費用の削減と、良い堆肥が安い値段で手に入ることから農家の経営が助かる。そして健康な野菜ができる。
だから、農薬に頼らなくても野菜が健康に育つようになってくるんです。
さらに有機物が臼杵の大地に還元されることで豊かな自然環境が守られる。
ということで大変意義のあることだと、迷いなく進めているそうです。
匝瑳市の基幹産業は農業です。
これからの農業、循環型農業、持続可能な農業を考える上で、または農家の経営を助けるためにも土づくりセンターを作ったり、独自の認証制度を作るのもいいと思いますが、いかがでしょう?
答:土づくりセンターについては、畜産業由来のたい肥等を有効活用することで、化学肥料の使用低減による生産コストの低減や環境への負荷低減にも資するなど、持続可能な生産に向けた取組として有効な施設であると考えている。
併せて、これら施策と一体となった独自の認証制度を制定することで、ブランド化による付加価値の向上や収益性の向上等が期待できることから、農業経営の安定化に向け、先進事例を調査研究していきたいと考えている。
3、臼杵市では、有機農業で新規就農を考えている人を地域おこし協力隊として募集し、研修の後、自立できるようサポートしています。
この取り組みで7年で13名もの有機農業に携わる地域おこし協力隊をつくってきました。
地域おこし協力隊の制度は大いに利用するべきだと思います。
有機農業で就農を希望する人材を地域おこし協力隊で募集するのは、いかがでしょうか?
答:現在のところ、有機農業での協力隊の募集予定はないが、地域おこし協力隊をきっかけに新規就農者となるケースもあることから、引き続き、先進自治体の取組みを調査研究していきたいと考えている。
4、匝瑳市の農業の中でも盛んなのは、稲作農業ですが、少し前に印西の方で水稲の有機農法へ転換する研修会が開催されました。
匝瑳市でも研修会を開くのも良いと思いますが、いかがでしょうか?
答:有機農業については、国が定める「みどりの食料システム戦略」においても、食料・農林水産業の生産性向上と持続性の両立を目指す取り組みの一つとして位置付けられているところである。
有機農法等に関する情報発信につきまして、関係機関等と連携を図るとともに、先進事例を調査研究していきたいと考えている。
⇨単発でもいいから有機農法へ転換する研修を開いてみては?!
ロシアが、旧ソ連崩壊後に飢餓を免れたのは、個人自給率が高かったから、とも言われている。
今、半農半Xという生き方を望む人が増えてきている。
家庭菜園も含め、個人で消費するための畑では、農薬や化学肥料を使う人の割合も少なくなる。
半農半Xや家庭菜園、あるいは小規模農家は、種苗法で許容される範囲内で自家採種をしている人もいる。
小さいことではあるが、そういう人が増えることで、結果として、食料安全保障としても強くなりますし、関心の高まっている半農半Xを後押しすることで移住促進にもつながる。
臼杵市は、先進的で今は凄い勢いで進めているが、10年前は、今の匝瑳市と同じような感じだった。
その状態から臼杵市は道筋を立てて、10年かけて、着実に成果を上げてきました。
それが、外から人を呼び込むことに繋がり、今はその勢いを増している。
そして、「100年ごはん」というドキュメンタリー映画まで作ってしまった!
農業、つまり土と食と自然環境がつながっていて、循環し、それを大切にすることで、後世に今よりも豊かな状態にして繋いでいく。
そんなことが市民に浸透しています。
「生きることは、食べること」
農業は生きていくために必要な食をつくっています。
そして、自然環境とも密接につながっています。
匝瑳市も未来へつなぐ取り組み、
10年後や100年後を見据えて、まずは小さくでも、始めていくべきではないでしょうか?
私は、東日本大震災を東京で経験しましたが、物流が途絶え、お金があっても、食べ物が買えませんでした。電気も自由に使えなかった。
これから匝瑳市は脱炭素先行地域により、エネルギーの自給へ向かいます。
そして、食についても生産過程を含めて自給率をあげていく。
エネルギーと食は生きていく上で欠かせないものですから、匝瑳市の100年先を思い描きながら進めていただくようお願いします!