不登校児童数が年々増えています。令和5年度で全国で34万6,482人、不登校になる理由は様々ですが、不登校児童数の増加の原因には、不登校に対する社会の認識が変わり、無理してまで通わせようとしなくなったことも背景にあるのではないでしょうか。
不登校を説明するときに、よく使われる例えがあります。たくさんの人に合うように作られたはずの既製品の靴、それでも履き心地がよくないと感じることがあります。そんなときに、足に腹を立てたりはしません。足が悪いのではなく靴に合わないだけなんです。
私は、数の増加だけをとって、必ずしも問題だとは思いません。追い詰められる前にSOSを出せるようになった、自分にとって、この状況はNo!と、意思表示しやすくなったことは、ある意味で救いとも言えます。
そして、もし自分に合う選択肢を選び、前向きに自分の道を進んでいたならいいんです。しかし、学校に通えない自分を否定的に捉えて思い悩んだり、また親の離職につながり経済的な困窮や苦しい状況に陥る家庭が増えていくようでは、社会の仕組みとして問題があります。
私が考えるこの問題に対する解決策の一つは、教育の在り方を変える、つまり子どもが面白がる学校、学びたくなる教育へ学びの構造転換です。
それはつまり、令和の日本型学校教育と言われる今の学習指導要領で示された新しい学び方を、本質的な意味を捉えながら前へ進めることにあります。
これまでの学校システムの大きな問題点は、同質性の高さと固定された閉鎖的な空間にあったと、教育分野の専門家から指摘されています。同じ年齢の子が同じ内容を同じペースで行う画一的な一斉授業、それはたくさんの子どもは、効率的に同じような教育を受けるためには大変貢献してきた部分があります。
しかしもろ刃の剣のように、よい面があると同時に問題点でもあります。吹きこぼれ・落ちこぼれ問題であったり、知識を積み詰め込んでいくことを繰り返すことで、何のために学ぶのか、学びの目的を見失ったり、同調圧力を生み出しやすく、はみ出しづらい環境により生じる不安やストレスが、いじめやほかの問題に連鎖することがあります。
これら学校の諸問題を解消するためにも、そして何より子どもたちが前向きに学びへ向かうためにも、新しい学び方を積極的に進めていくべきだと考えます。
そこで伺います。
主体的・対話的で深い学び、アクティブラーニングや協働的な学び、個別最適な学びなど、学習指導要領が示す新しい学び方を現場に落とし込むために、匝瑳市ではどのように取り組まれているでしょうか。
また、学習指導要領で示されている個別最適な学びを進めるために、今、自由進度学習を取り入れる学校が増えています。子どもが自ら学習計画を立てて自分のペースで実施する自由進度学習は、自分の適性を自ら考え、自らの学習意欲に沿った形で進められるため、これまでの与えられる学びから、これからの主体的な学びを進めることにもつながり、もっともっと導入すべきだと考えます。匝瑳市の小・中学校の自由進度学習の取組状況と今後の導入計画をお聞かせください。
②次に、ルールメイキングについて。
生徒指導提要が、令和4年12月に改定されました。生徒指導提要は、文科省が生徒指導の理論、考え方や実際の指導方法等について、時代の変化に即して網羅的にまとめたものになりますが、新たに子どもの権利や絶えず見直しを行うため、校則のホームページ公開、児童生徒の参画や保護者等の意見を聞くこと、校則見直しの変更プロセスを明示化することが盛り込まれています。
ブラック校則はもとより、これまで必要以上に厳しい校則や生活の決まりであったり、どうしてあるのか説明できないような校則が日本全国に存在してきました。時代が変わっても見直しをされることがなく、伝統的に引き継がれてきたものもあります。そういった校則に息苦しさを感じたり、社会と学校の在り方にずれを感じて、もやもやしながら学校生活を送っている児童も決して少なくないのではないでしょうか。そんな背景もありつつ、本日はルールメイキングの提案をさせていただきたいと思います。
ルールメイキングとは、生徒が主体となり、校則や制服を見直す取組で、NPO法人カタリバによると、全国430以上の学校に広がっています。ルールメイキングを実施した学校の先生からは、以前は先生と生徒が対立していたが、それが少なくなった、学校にいい変化を生み出しているという声が聞かれます。御説明いたします。
学校は、民主主義社会を支える最も重要な土台となる場所です。自分たちの社会は自分たちでつくるが民主主義社会の原則であるならば、学校もまた、自分たちの学校は自分たちでつくる機会を生徒、先生、保護者などの関係当事者に十分保障する必要があります。
日本の教育基本法は、平和で民主的な国家及び社会の形成者を育むことを教育の目的としています。それはすなわち、他者の自由を認めることのできる自由で自立した市民の育成です。この教育の最上位目的を達成するためにこそ、ルールメイキングに取り組む意義があります。
子どもたちにルールづくりを任せたら荒れてしまうだろうと懸念される方もいるでしょう。違うんです。ルールメイキングは、秩序の破壊ではないですし、好き勝手やっていいよではありません。放任ではないんです。子どもたちが自分と他者の意見を尊重しながら対話を通して合意形成を図っていく、それは主体的市民の育成、つまりシチズンシップの学びになります。子どもたちはちゃんと合意形成を図る能力を持っています。その力を信じてみませんか。これからの時代に必要な主体的市民の育成のためにも、ルールメイキングを行っていくべきだと思いますがいかがでしょうか、見解を伺います。
次に、不登校対策について。
誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策、COCOLOプランの中で、学校風土の見える化とあります。
学校風土とは何のことかと私は思っていたところ、国立教育政策研究所の宮古紀宏さんのお話を聞く機会がありました。学校風土に統一された定義があるわけではありませんが、学校の学習環境や質を意味するとのことです。そして、良好な学校風土に影響を与える要素として児童生徒が、学校や家庭、地域の大人から温かみや思いやりを感じていること、その実感の上で、大人から差別されずに公平に高い期待をかけられていると感じること、学校や家庭、地域における活動に関与する機会が与えられ貢献していると感じていることが上げられるそうです。
そして学校風土を構成する重要な概念の一つ、学校とのつながりに着目して、学校とのつながりは、いじめの未然防止に関連するか検証されたことがあるそうです。
学校とのつながりというのは、この学校が好きだ、この学校にいると安心して過ごすことができるなど、学校の安心や安全といった居場所感、学校への好感を意味するんですが、日本で約2万人、アメリカで1万7,000人を対象に行った調査では、学校とのつながりといじめ加害経験が統計的に関連があるという分析結果が出たそうです。つまり、学校とのつながりが強いほど、いじめ加害経験がないという傾向があることが示唆されたとのことです。
そしてそれとは別の調査で、文科省が行った不登校の理由に関するアンケートでも、子どもと保護者と先生に、それぞれ同じ内容でアンケートを取ったものがあります。子どもと保護者は大体数が一致するものの大きなずれがあったのが、いじめの認知です。つまり、先生が気づかないところでいじめが起きる、または先生はいじめだと思わないが本人はいじめだと感じて、それが不登校の一因となる。
いじめは誰でも当事者となり得ます。起きたいじめを全て把握し対処するのは大変なものがあります。未然防止にもつながる良好な学校風土をつくっていくことが大切です。COCOLOプランで示されている学校風土の見える化について、どのように取り組まれるのか伺います。
あわせて市内不登校児童の今年度の最新の数と、全体の児童数に対しての不登校児童数の率の近年の推移を、小学校、中学校に分けてお答えをお願いします。
さらに、フリースクールなどに通っている子どもの出欠は、学校ごとで校長の裁量によると思いますが、不登校の数に入っているのでしょうか。
そして先日県教委の方から不登校に関する説明を受けましたが、文科省が令和5年度に行った調査の中で、相談機関に相談等をせず教職員からの継続的な支援も受けていない児童が若干いるとのことでした。市内で不登校の児童で、相談機関や教職員からの継続的な支援のどちらにもつながっていない児童がいれば、その数を教えてください。
また、令和8年度から県内公立高校の入学選抜に関わる調査書から出欠の記録が削除されると県のホームページ上で拝見しました。つまり、公立高校の入試選抜の際に、在籍校での出席状況で判断しないとのこと、不登校の家庭含め、全ての児童が知る必要があると考えますが周知をされるのでしょうか、お聞かせください。
【登壇質問への回答】(教育長)
初めに、学習指導要領の新しい学び方の取組状況と今後の展望についてのお尋ねでございますが、学習指導要領及び第3期千葉県教育振興基本計画、次世代への光輝く教育立県千葉プランに基づき作成された北総教育指導の指針に準じ、重点目標及び努力事項を示した匝瑳市学校教育指導の指針の一つとして、主体的・対話的で深い学びによる生きる力の育成や、個に応じた指導の一層の充実を努力事項としております。
各学校におきましては、これらを受けて、児童の心身の発達の段階や特性、及び学校や地域の実態を十分考慮して、校長が責任者となって教育課程を編成し、教育活動に取り組んでいるところであります。
また、市内小・中学校の自由進度学習の取組状況と今後の導入計画についてでございますが、自由進度学習として年間を通して、全ての教科で取り組んでいる学校及び導入計画がある学校は現在のところございません。総合的な学習の時間や教科によっては、子どもが自ら学習計画を立て、課題を設定して、自分のペースで調べまとめるなどの学習を行っております。
なお、家庭学習において、自分で学習計画を立て、教科や課題、時間を決めて学習に取り組んでいる学校はございます。
次に、ルールメイキングについてのお尋ねでございますが、まず校則の見直しにつきましては、市内各校において、児童生徒が主体的に参加することで、生徒指導の目的とされる自己指導能力の育成が図れるように取り組んでおります。具体的には、学級や生徒会、生徒総会の場において、校則について生徒が確認したり議論したりする機会を設けております。また、議案によっては、全校生徒へのアンケートを集約した内容も加味し見直しに取り組んでおります。
次に、制服についてでございますが、本市の3中学校では令和8年度より制服のデザインが変わります。制服の見直しに際しての匝瑳市中学校制服検討委員会には、生徒代表が含まれており、さらには保護者や全校生徒及び小学校5・6年生の児童にもアンケートを実施しております。
各校の教育活動全体を見ましても、学級や授業等の中でルールを決める場面がありますが、児童生徒同士による話合い、児童生徒と教師を交えての話合いなど、発達段階に応じて対話を通して決定する場を設けております。
教育委員会といたしましても、児童生徒が他者の意見を尊重しながら、対話を通して合意形成を図っていくことは大切であると考えております。
最後に、不登校対策のCOCOLOプランで示されている学校風土の見える化への取組についてのお尋ねでございますが、市内小・中学校ではCOCOLOプランが示される以前より、学校運営、学校風土の改善のため、見える化に向けた取組を学校ごとに工夫して実施しております。一例としましては、毎月の児童生徒へのアンケート調査や定期的な児童生徒、保護者、地域代表等への学校評価アンケートを実施したり、あるいは地域代表の方から直接意見をいただく機会を設けたりするなど、様々な手法を組み合わせながら、全ての学校で実情に合わせた見える化に向けての取組を行い、その結果を良好な学校風土の醸成に生かしております。
【登壇質問への回答 学校教育課長】
私からは、教育長答弁に補足して、市内不登校児童生徒数とフリースクールについて、継続的な支援について、高校入試の調査書の変更についてお答えいたします。
市内児童生徒のうち、令和6年度に、不登校を理由に30日以上欠席している児童生徒の数は、令和7年1月末現在、小学校25名、中学校36名の合計61名となっております。また、近年の市内不登校児童生徒数の全体に対する出現率の推移については、小学校、令和3年度0.79%、令和4年度1.61%、令和5年度1.81%、同じく中学校では、令和3年度3.56%、令和4年度4.71%、令和5年度4.26%となっております。
次に、フリースクールなどに通っている児童生徒が不登校の数に含まれるかとのお尋ねでございますが、現在、国や県の基準では、統計上そうした児童生徒も不登校児童生徒数としてカウントすることとなっており、本市でも同様の基準で調査を行っていることから、該当者がいる場合には不登校の数に含まれることになります。
次に、市内で相談機関や教職員からの継続的な支援のどちらにもつながっていない不登校児童生徒数についてのお尋ねでございますが、本市においてはそのような児童生徒はおりません。
最後に、県内公立高校の入学選抜に関わる調査書から出欠の記録が削除される旨は周知されるのかとのお尋ねでございますが、県教育委員会からの通知に従い、既に各中学校へは周知が済んでおり、全ての生徒に周知する予定であります。
【再質問】(①新しい学び方について)
問1:まず新しい学びについて、自由進度学習の取組状況の御答弁の中で、総合的な学習の時間や教科によって行っているとありました。
総合的な学習の時間で自由進度学習を取り入れているというのはよく聞くんですけれども、それ以外のほかの教科で取り組まれているところは、どの教科で取り組まれているのでしょうか。
答:算数、社会科、理科の単元の一部、計算や漢字等のドリル学習での事例がございます。
問2、 細かく導入計画を決めてしまうと、それに縛られてしまうので、細かく計画を立てるべきだとは思わないんですが、それでも少しずつ少しずつ可能なところから、いろいろな教科に広げていく、展開していくべきだと思うんです。
現場の中では、自由進度学習など、新しい学び方を広げていこうというような方向性というのはあるんでしょうか。
答:各学校におきましては、令和3年の中央教育審議会答申を踏まえた個別最適な学びと協働的な学びを充実していくために取り組んでいるところでございますので、必要な場面では実施されていくものと考えております。
問3、一歩でも二歩でも前へ進めていただきますよう、よろしくお願いいたします。
それで、今、これからの時代に求められる資質として、世界でもいろいろな機関が示していて、学習指導要領なんかともリンクしているんですが、例えばSDGsの中にもエンパワーメント、一人一人が自らの意思で決定をし状況を変革していく力を身につけることとあります。
OECDでも、ラーニングフレームワーク2030の中でも、これから必要になる能力がいろいろと示されていますが、その中でエージェンシー、主体性、当事者意識とあります。主体性が世界でも必要だと言っている。
ただ、主体性と自主性を混同しているという指摘を聞くことがあるんです。言われたことを自らやることを自主性、ですから言われたことを言われたとおりに進んでやったとしても、それは主体性じゃないんです。主体性というのは、自分の頭で考えて行動する力、まさに学習指導要領で示されているビジョンなんですけれども。それから言われたことに対して疑問を持つことも大切で、これは批判的思考意味するクリティカルシンキングという言葉を、最近よく目にするようになりました。世界経済フォーラムが作成した21世紀の教育における新たなビジョンのための16のスキルの中にクリティカルシンキングと出てきて、同じように中央教育審議会とか文科省のいろいろな資料の中でも出てきます。クリティカルシンキング、物事や情報を無批判に受け入れるのではなく、多角な角度から検討し、論理的、客観的に理解することを指します。
これ例えば欧米だと、先生から出された課題に対して生徒は、なぜそれをやるんですかと聞くそうなんです。そして中学生くらいになれば、先生この課題をやる意味としては、私はこういう意味があると思うんですけれども、私の認識は合っていますかというふうに聞くそうなんです。そして先生は、それに対してきっちり答える。でも今までの日本でこんなこと言ったら、ちょっと生意気なやつだなと思われるところがあったので、どちらかというと黙って従うような風習があったと思うんです。
ですからこれを変えるためには、意識的に変えていかなければいけないと思うところなんですが、学習指導要領には大事なことがいっぱい詰まっています。ただ新しい学び方である個別最適な学び、対話的な学び、協働的な学びについては、先生方御自身もやってきたわけではないのでノウハウがありません。これをどのように広げていくのか、どのように考えてますでしょうか。
答:千葉県教育長北総教育事務所から、定期的な訪問により指導を受けております。また、市の教育委員会訪問により指導、助言を行っております。
さらに教職員への様々な研修会がありますので、その中で身につけたことを実践に反映させていく流れになります。
問4: 変革というのは、中央が変わっても地方が変わるのは10年後、15年後と言われたりします。
ですが、今の小学生、中学生にとって大事なのは、今なんです。新しい時代の扉を開けるには、誰かが思いと熱意を持ってやらなければいけません。誰がやるか。それはやはり現場の先生にしかできないんです。でも、先生は忙しい。
そこで今取り入れるところが増えてきているのが、「この指とまれ!」方式で、先生方の学び合いの場をつくることです。ハーバード大卒の若い市長で有名な兵庫県芦屋市でもやっていますし、ほかのところでもやっています。
これは何かというと、無理やりやれやれではなく、やりたい人を募る立候補制ですね、この指とまれと。忙しい中でも、その中でも、私は本当にこの学び方をやりたいんだという先生同士が、情報のシェアだったり学び合いをする。そして時に外部講師を呼んだり、視察が必要ならそこに市が予算をつける。新しい時代の扉を開けるには、受け身ではできません。まさに、主体的に動く人が必要なんです。そしてそれをサポートするのが、教育行政の役目だと私は思うんです。そんなに大きな予算は要らないと思いますので、こういった仕組みを導入するのはいかがでしょうか。
答:現在、匝瑳市教育研究会において、希望研修事業として、各研究部会における自発的な研修充実のための助成制度がございます。
問5:なるほど。制度としては既にあるということですね。それを生かせば、今私が提案したことも可能であると認識いたしました。
私先ほど視察をと言いましたが、視察ってとても大事だと思うんです。やはりこの目で見て、その場の空気感を感じないと分からないものがあると思います。しかも、本当にそれを知りたい人が見に行く、これが大事だと思うんです。
自由進度学習でいったら、愛知県の緒川小学校、50年前から自由進度学習をやっています。視察も全国から来ていて、テレビの取材が入ったりもします。
自由進度学習で進める教室というのは、これまでの日本の教室の風景、つまり黒板の前で先生が説明をして、子どもたちは全員きれいに並んで、前を向いてノートを取るとは全く違う風景が広がっているんですよね。
そうではなく、一見ばらばらではあるが、それぞれが学びに没頭する。時には友達に聞いたり先生に聞きながら学びを進める。まさに主体的な学びであり、個別最適な学びであり、協働的な学びなわけです。今必要な学びなんです。
この緒川小学校では、先生たちの役割は、答えを教えるんじゃなく、答えを見つけるために考えることを促すんだそうです。そしてそれをやるための環境のつくり方が考えられている。自由進度学習にしたら勉強しない子も出てくるという懸念がありますが、そうならないための工夫もある。50年のノウハウの蓄積があるわけです。
だからこれは、現場で肌で感じてもらって、その感動とノウハウを匝瑳市に持ち帰ってきてもらわないと。私は、自由進度学習を総合的な学習の時間だけでなく、ほかの教科にもどんどん広げてほしいんです。それをやりたい市内の先生のためにも、匝瑳市のこれからの教育のためにも必要だと思いますが、いかがでしょうか。
答:先進事例の視察をすることは大切だと考えますが、市として希望者を募って、団体で視察を行うことは難しい現状でございます。
ただ、現在県内をはじめ、様々な学校の研究会の案内は各校に紹介しており、校長の判断により、出張として視察研修を行うことは可能でございます。
問6:私としては、市として1団体で行くというよりは、先ほどのこの指とまれ方式の学び合いの流れの中で、これは見るべきだよねっていう場所を、ほんの数名とかでいいんです。本当に見たい人が、特使のような感じで見に行く、そういうイメージです。
うまくいっている成功事例があるのに、答えがあるのに、それを見ないというのはもったいない。議員が幾ら見てもしようがないんです、現場の先生が見ないと。
ちなみに、自由進度学習じゃなくても、新しい学び方を進めるために、匝瑳市ではどこか、現場の視察は行ったことはあるんでしょうか。
答:匝瑳市として、教職員を集めて、現場の視察に行ったことはございません。
ただ本年度は、市内の教員が地区の代表として、全国の教職員が集まる研修会に参加しました。その成果を、市内の研修会において講話をするなど、研修内容を市内教職員に還元いたしました。
問7:そういった取組も大切ですが、新しい学び方のノウハウを主体的に得るためにも、現場の視察の検討をよろしくお願いいたします。
先ほど挙げた愛知県緒川小学校の先生の口から、教師は指導者でないんです、伴走者、サポートする側になっていくという言葉がありました。私はこの、先生は指導者ではなく伴走者になっていくという言葉を、今新しい学び方を進めているところからよく聞くようになりました。
匝瑳市でも、校長会ですとか現場から、伴走者というワード、あるいはそれに似たような言葉というのは出てきているんでしょうか。
答:中央教育審議会答申の中で使用されているということは承知しておりますが、校長会や現場から直接聞いたことはございません。寄り添った指導という言葉は、よく使われております。
問8:寄り添うことも大事だと思います。
今上げていただいた中央教育審議会、令和の日本型学校教育の構築を目指してという答申の中で、教職員の目指すべき姿として、子ども一人一人の学びを最大限に”引き出し”、主体的な学びを支援する“伴走者”としての役割を果たしていると書かれているんです。
自由進度学習に本格的に取り組んでいる教室では、取り組んでいる先生自身の中でもイノベーションが起きていて、そのイノベーションを、匝瑳市の先生にも感じてもらいたいんです。
そして様々な教育に関しての話を聞く中で、教育するは英語でエデュケートですけれども、その語源となったエデュケーレは引き出すという意味を持っているそうなんです。
ぜひ今後も、今後、匝瑳市で子どもの個々の能力を引き出す、よき伴走者が増えてくることを期待しています。
それで、子どもたちの中で、自分はこうなりたいから、こういう知識が必要で、だからこの勉強をするという目的が見えていたらいいんですが、勉強する意味が見いだせないと苦しくなると思うんです。
日本の教育はどちらかというと積み上げ式で、あれとこれとこれを学んだ後、後々、あの時の学んだことが今役に立つんだなという形態です。
ですが、欧米はプロジェクト型学習が多く、例えば地球環境をどうしたら改善できるか、私たちに何ができるかという問いに対して必要な知識を学びながら進めていく。だから、生徒の興味も関心も高まるんです。そして、子ども自身も、何で今自分がこの勉強をしているのか、その目的を理解している。
それで、日本も今ようやく探究型学習、プロジェクト型学習をしていこうという流れがあります。私はもっともっとこれを取り入れていくべきだと考えるのですが、匝瑳市での取組状況や今後の展望はどうなってますでしょうか。
答:先ほども御答弁させていただいたとおり、各校で校長が責任者となって教育課程を編成し教育活動に取り組んでいるところでありますので、個別最適な学びと協働的な学びを充実していくために取り組んでおり、単元や教材に応じて実施されていくと考えております。
問9:私の思いとしては、もっともっと展開していってほしいと願います。特にこの辺が学びの構造転換です。
学力というのは、蓄積した知識の量ではなく学ぶ力だと思っています。自分の直面した問題をどうすれば解決できるか考え、そのために必要なことを学ぶ力、学ぶ力と書いて学力、知識の量は学力の一部であって本質ではないと思うんです。
今後ぜひ、プロジェクト型学習で、子どもたちの学ぶ力を育てる方向へ、もっともっとかじを切っていってほしいと思います。
そして子どもたちは、何で勉強しなくちゃいけないといけないのか疑問に思う子もたくさんいると思うんです。もしかしたら誰しもが一度は考えるかもしれません。そのもやもやが晴れないと、なかなかやる気が出ないわけです。ですから子どもたちもみんなで、考える機会っていうのをつくったほうがいいと思うんです。
私も実は約30年前、高校のときですが不登校になりました。高校受験を終えた後に勉強する意味、目的を失ってしまったんです。それで、熊本大学の教育学部で教えてらっしゃる苫野一徳さんという著名な方なんですが、おっしゃっていたことがあって、この方の言葉が私は腑に落ちたんです。
この方、全国の自治体や教育のアドバイザーをされていて哲学者でもあるんですが、その苫野さんが、公教育の本質は全ての子どもが自由に、つまり生きたいように生きられる力を育むことにあるとおっしゃっていて、私はとても腑に落ちたんです。かたい言葉で言えば自己実現です。そして、自由に生きるのがいいなら他人を殴ってもいいのかということになります。
そこで必要になることが、自由の相互承認というものになります。つまり他人の自由を認め侵害しないこと。これによって、個々が自由に生きることができ、そして自由を侵害されない平和的な社会がつくっていける。ですから学校というのは、全ての子どもが自由の相互承認の感度を育みながら自由に生きられるための力を身につける場所と言えると思うんです。知識を詰め込むだけだったら塾に通えばいいんです。
自由と自由の相互承認、ちょっといきなり突発的な言葉を使ってしまいましたが、実はこれはOECDでも同じようなことを言っていて、教育の目的は、個人のウェルビーイングと社会のウェルビーイングの2つを実現することにあると言って、私はとてもつながるんですよね。
私は子どもたちに、こういう本質的な問いに向き合う時間って、これから先、生きていく上で、とても大事だと思うんです。本質を考えることで自分にとっての軸ができる、こういう対話の時間を哲学対話、子ども哲学と、最近では呼んだりします。こういった時間、設けるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
答:中学校学習指導要領特別活動の学級活動の中に、一人一人のキャリア形成と自己実現の内容で位置づけられております。
これを受けて1年生では私たちが学ぶ理由、2年生では人が学ぶ理由の題材があり、自分で考え、学級の友達や身近な大人たちの考えを聞いてまとめる授業がございます。
問10:既にあると、卒業した後も子どもたちが人生を見失わないように、この取組を応援しています。
欧米では、小学校でも、幼児期でも哲学対話しているところもありますので、できれば下の年齢の子にも広げてほしいなと思います。
それから、民間人校長から広島県の教育長になられた平川理恵さん、この間、千葉市で講演していただいたんですが、平川理恵さん、本当に数々の改革をされた方で、県の教育長という、ある程度財政規模も権限も違うんですが、とにかく目の前の今の子どもたちのために、思いとやる気を持って改革されました。
その改革の一つに、高校受験に自己表現を入れたんです。一斉一律授業をやって知識を詰め込み試験で評価する。もうそういう時代ではなくなってきていると気づいている人も多くなってきたと思うんですが、幾ら勉強ができたとしても、自己認識や自己選択ができなければ、戸惑いながら人生を送ることになりかねません。
自分とは何者かということを認識しておくことが大事だと平川さんもおっしゃられていて、その先に自己実現があるんですが、高校受験で自己表現を取り入れたことで、おのずと中学の授業で自分とは何か、そもそも生きるとは何かということをやるようになりました。これが子どもたちにとって、非常に大切な生き生きとした時間になったそうです。この自分とは何か、生きるとはという問いに向き合うことが、主体的に学ぶ、大人になっても学び続ける上でも、人生の大切な通過点になります。
そこで、高校受験の状況を伺いたいのですが、現在千葉県の高校の入試選抜方法というのはどういう状況でしょうか。
答:一般入学者選抜の本検査の内容は、国語、数学、英語、理科、社会の学力検査、学校設定検査となり、学校設定検査は、面接、集団討論、自己表現、作文、小論文、適性検査、学校独自問題による検査及びその他の検査のうち、いずれか1つ以上の検査を実施するということになっております。
千葉県も今は、学力テストだけじゃないということで、時代の変化をうれしく思います。
ただ、選択制はとても大事なことなんですけれども、つまりやらない人はやらないと。高校受験を決めるのは県ですが、それによって中学生活も決まってきます。高校入試の学力テストでいい点数を取るために、おのずと中学生活がテストで高い点数を取るための学びになってしまいます。
今の高校受験の採点バランスなどが適切なのかどうなのか、県教委と意見を交わす機会もあるかと思うんですけれども、市内の中学生の様子を見て、もし変えていくべきだと感じる際は、ぜひ県に対して、しっかり伝えてほしいと思います。
今、不登校の数が増えていますが、不登校の子どもだけじゃなく、形としては学校に通っているけれども、もやもやを抱えている子どもって、いっぱいいると思うんです。それが今、不登校児童の増加という形で顕在してきたんだと私は思っています。
既に学校では様々な取組されていますが、まだまだ一斉一律授業が多い、その比率を減らして自由進度学習の比率を増やしたり、自分の知りたいことを探求できたり、学びの意味を感じたり、学びの面白さに出会えたり、手段を目的化してはならないっていう言葉を文科省もよく使っているんですけれども、学力や、いい高校、いい大学に入るのは、なりたい自分になるための手段であって目的ではないわけです。テストでいい点数を取ろうという取組も大切です。しかし何のためにというところがずれてしまったら本末転倒です。点数が上がっても、子どもが教室で元気がなかったり、面白そうでなかったり、不登校や長欠が増えたり、果たしてそれでいいのか。学校って楽しいはずですよね。もっと元気に、学びって面白いし、学校って楽しいと、私は感じてほしいと思います。今こそ抜本的な学びの構造転換を進めてほしいと思います。よろしくお願いいたします。
②ルールメイキング、③不登校対策 の再質問へ つづく→